2019年7月1日月曜日

年金制度が無い香港の高齢者、どうやって生活しているの?


こんにちは、ヒナタです。

先日から日本では、老後資金2000万円が不足すると言われ話題になっています。

ここ数年、日本の年金制度は老後の生活の支えにならないと言われ
受給年齢が上がるとか、受給額が減るなどと言われてきましたが
あらためて数字で2000万円と言われると、かなり深刻に感じました。

しかもこの試算は一般的なサラリーマン世帯でのこと、
厚生年金に入っていないフリーランスや自営業の人の場合、
不足額は2000万円では済まないはずですよね。

こうなった以上、嘘つきだとか詐欺だとか国を責めても始まりませんから、
個人で資産運用するのが最も現実的なのかもしれません。

さて、ここ香港ではそもそも年金制度がありません。
香港の高齢者たちは、どのように生活費を得ているのかご紹介します。

まず、生活費は子どもが渡す
香港は土地が狭く、また家賃も高いので
一般的に子どもは成人して社会人になっても、
結婚するまで家を出ず、実家で両親と一緒に暮らしています。

日本でも、もし都心のど真ん中に暮らしていたら
学校も職場もアクセスが良いはずなので実家から通えるでしょうし、
家賃が高いのにわざわざ一人暮らしをするのは勿体ないですよね。
そういう感覚に似て、香港では成人しても一人暮らしを始める人は少数です。

そのため、学校を卒業して働きに出ると家に生活費を入れます。
私の周囲の香港人から聞いた平均額は、給与の3分の1です。

初任給が15万円としたら、5万円を両親に渡します。
30歳手前で30万円もらっているなら、10万円を渡します。

多いでしょうか?少ないでしょうか?

もちろん家庭によってケースバイケースですので、
両親がまだ現役だからと全く家に生活費を入れていない人がいたり、
兄弟が多いから、家にいれる一人当たりの生活費は少なめというケースもあります。
色んな人の話を聞いていると一般的に、給与の3分の1くらいのようです。

こうして、成人した子供がいる両親は、生活費を子どもに頼ることができます。

「親のことは心配しないで自分のために貯めておきなさい」
「いつも悪いわね。自分の分は足りているの?」という態度でもなく
「今月の生活費まだ?」と催促したりします。

親が子どもを養い、成人した子供が親を養う、
香港ではそれが当然なのです。

もちろん、両親はもらった生活費でのんきに暮らしているかというと
食事の準備や掃除など家事をして、成人した子どもの身の回りの面倒をみます。
そういう意味では、持ちつ持たれつという感じがします。

子どもが結婚したら
では、子どもが結婚して家を出たらどうなるのでしょう。

私の周りの香港人のケースを聞いていると、
やはり引き続き生活費を渡しています。

そもそも香港で、今の現役世代(30代以上)は兄弟が多い人が多く、
友達のところも4人兄弟や5人兄弟はざらにいます。

ですので、子どもが全員結婚しているかというと
一人くらい独身で実家を出ていない人がいます。
主にその子が生活費を家に入れてくれますし、
結婚した兄弟も引き続き実家に多少なりとも生活費を渡します。

日本と同様、少子化の香港では
次の世代、つまり今の子育て世代は、一人っ子が多いので
次の世代になると生活費は一人に頼ることになるのでしょう。

日本の年金制度同様、将来は働ける世代1人(子ども)につき
高齢者2人(両親)の生活を負担するという計算になります。

子どもがいない場合
香港は生活費を子どもに頼るといっても、
それでは未婚の人や、子どもがいない夫婦はどうするのでしょう。

今の高齢者世代は兄弟がとても多いので、子どものいない高齢者の生活を
その兄弟が支えていることも珍しくはありません。

それに、香港では女性でもキャリアを積む機会が昔からありましたので
独身女性が定年まできっちり働き上げて、家も購入して現役のうちにローンを完済し、
自分の貯蓄や投資で生きている人もいます。

私の知り合いでも、未婚の姉妹二人で家を買ってローンを返し
定年を迎えようとしている人がいます。

政府からの現金支給「生果金」
香港では年金制度がないものの、高齢者には少額の現金が支給されます。

広東語では「生果金」といわれ、訳すと「果物代」です。
果物を買うくらいのお小遣いとでも言いましょうか、ほんの気持ち程度です。

金額は毎月2,675HKDです。(3万円程度)

申請資格は
  • 満65歲以上。
  • 香港に7年以上居住していて、申請日より以前1年間は連続して香港に居住していること。
  • 他に障害者手当など政府の援助を受けていないこと。
  • 受給期間は香港に居住していること。
  • 規定された収入限度や資産限度を超えていないこと。
<限度>
独身:資産34万3000HKD 月額収入7970HKD
夫婦:資産52万HKD    月額収入13050HKD

上記の収入は、仕事で得た給料、ボーナス、自営業での利益、
退職金、家賃収入などを指します。

家族や親戚からの資金援助は収入と見なしません。
つまり、子どもからもらう生活費はいくらもらっていようが、
この現金支給は得ることができます。

資産に関しては、不動産や土地、現金、銀行口座の貯蓄、
株、バスなどの営業許可ライセンス、金塊なども含みます。

ただし、投資用ではなく自分が居住するための不動産、
将来使うのお墓(香港の場合、墓石でなくロッカーのようなもの)、
保険商品の現金価値などは、資産と見なしません。

自分が主に住むための自宅以外に所有する物件は、資産と見なします。
また香港、マカオ、中国大陸、その他海外で持っている資産も、計算に含みます。

・・なんだか条件が多くて申請が通らないように思えますが、
不動産や貯蓄の名義を子どもに変えたりとあの手この手で条件をクリアし
多くの65歳以上の高齢者はこの「生果金」をもらっています。

普段の生活費は子どもからもらっていれば心配ありませんし、
お小遣いとして政府から毎月3万円がもらえたら、お友達と飲茶に行ったり、
孫におもちゃくらい買ってあげられますよね。

交通費の割引き
65歳になると「長者カード」というものがもらえます。

「長者」は高齢者と言う意味です。
「シルバーカード」と訳せば良いでしょう。

このカードを提示すれば香港内の色んな所で割引特典があります。
ディズニーランドの入場券や博物館などはもちろん、
一番大きいのは交通費の割引でしょう。

一部を除くほとんどの路線バス、MTR、フェリーなどで
乗車料金が一律HKD2(約30円)となります。
通常料金がいくらに関わらず、一律HKD2です。

収入の無いお年寄りにとって、かなりやさしい割引制度だと思います。
香港の交通費は日本より安いものの、年々ものすごいペースで値上がりしています。
いくら値上げされてもHKD2で香港内を移動できるのであれば、お得です。

もっとも、収入の無いお年寄りに負担をかけないのは社会としてしかるべき配慮で、
日本もこういった政策があればお年寄りも出かけやすいんじゃないかなと思います。
まあ日本の場合は、高齢者が多すぎて割引したら財政を圧迫するだけでしょうか。

生活費を得られない場合
ここまで香港の高齢者の生活費について書いてみると、
年金制度が無い香港では、家族に頼って生きていることが明らかです。

さまざまな理由で生活費を得られない高齢者は、香港にも当然います。
日本の生活保護のような制度もあり、最低限の生活を保障する対策はあるようですが
提供される住居が極狭いなど住環境は決して良くなく、
電気代節約のために24時間営業のマクドナルドに入り浸るケースも聞きます。

日本でも年金制度の先行きは不透明ですが、
社会全体で現役世代が高齢者を支える日本と、

香港のように年金制度は無く
家庭単位で現役世代が高齢者を支える香港と、
どちらが理想的なのでしょう。

MPFはどうなのか
ところで、香港で年金制度が無いとは言っていますが、
2000年12月からMPFという制度があります。

日本の年金とは違いますが、個人と会社と半々を毎月積み立て、
それを株のように運用して、資産を増やしていくという制度です。

それまで株などやったことが無い人であろうが、
勤め出すと強制的にMPFに加入させられます。

これは現役世代が少しづつ積み立てて運用し、
定年した時にその資産が受け取れるというシステムです。

もちろん株のように、自分で投資先などを決めるため、
人によってそれぞれ運用成績が異なります。

私はローリスクな掛け方をしているので
運用成績は抜群によいというわけではありませんが、
マイナスになったことは幸い今のところありません。

これは完全に自分が積み立てたものが将来自分で受け取れるので
日本の年金制度に比べると随分と合理的だなと思います。

これなら、掛け金の多い少ないも自分の稼ぎから割り出されますし、
増えても減っても自己責任、老後に受け取る金額が少なくても受け入れられそうです。

日本でも個人型確定拠出年金など資産運用型の個人年金がありますが
香港のMPFはそれに近いものだと言えます。

日本も年金制度でもらえる受給額が期待でき無さそうなので、
個人型確定拠出年金を検討するよう勧めている動きがあります。
香港のMPFのように、日本にお住まいの方は検討してみてはいかがでしょうか。

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