こんにちは、ヒナタです。
私は香港に住んで10年と少し経ちます。
香港人の同僚や友達と一緒に過ごしていると、
日本人的に理解できないことは多々ありますが
逆に、日本人には無い発想で彼らに助けられたことがたくさんありました。
今日はそれを少しご紹介したいと思います。
「日本語下手だねって言ってやれば?」
以前、スランプに陥って広東語が全く話せなくなったことがあります。
そのきっかけは、とある日本留学帰りの香港人女性からの一言でした。
彼女は日本語が流暢でペラペラでしたが、日本や日本人が大嫌いでした。
日本から帰って来てせいせいしている、やっぱり香港が良いという感じです。
私は香港人の友達と一緒に過ごすときは広東語を使っていました。
当時の私の広東語レベルはそれほど流暢ではなく、
香港人の友達がゆっくり話してくれたり、私の言わんとしていることを汲み取ってくれて、
それでなんとかコミュニケーションが取れていたと思います。
そんな中、彼女はいつも私に自然なスピードと俗語を多用した広東語で話しかけてきては
「あれ、広東語分からないの?じゃあ日本語で話してあげるね」という調子でした。
彼女は話題の中心にいるので、皆で広東語で話して盛り上がったあとで、
私にだけ日本語で通訳をしてもらっても、なんだか疎外されたような気持ちになりました。
彼女に対してモヤモヤした気持ちでいたのですが、私もめげずに広東語で話そうと思った
ある日、会ってすぐに「広東語下手なったね」と言われました。
その一言で、一気に自信が無くなってしまい、彼女の前で広東語が話せなくなりました。
それだけではなく、日常生活でも他の香港人に対して広東語を話そうとすると
緊張して言葉が出なくなってしまいました。
スランプに陥ってしまったようです。
3ヶ月ほど過ぎたある時、広東語を話さなくなったことを不思議に思った
香港人の友達に聞かれて彼女のことを打ち明けたら、
その香港人は明るく笑ってこう言いました。
「彼女は広東語が話せるヒナタに嫉妬しているのよ」
「その子に、あなたの日本語も下手になったねって言ったらいいのよ」
日本人が嫌いな彼女にとって、広東語が話せる日本人が
目障りだったかどうか?本人に聞かなければ本当のところはわかりません。
傷つけるつもりはなく、下手だと感じたから事実を言っただけかもしれないし、
私のことが嫌いだからわざと傷つけるようなことを言ったのかもしれません。
実際はどうだったにしろ、彼女のことも良く知っているこの友人が、
彼女は私が広東語を話すことを嫉んでいるのだから、気にすることは無いと
言ってくれたことでだいぶと心が軽くなりました。
彼女の日本語は流暢で、そんな相手に下手だと言うのもおかしいのですが、
とにかく言われたら言い返すのが香港人なのです。
言われっぱなしで真に受けて泣き寝入り、
気にしすぎるあまり広東語が話せない精神状態になったなんて、
一人で傷ついていたってダメなのです。
そっちこそ下手だと言ってやるくらいで良いのです。
「ここは日本じゃないよ」
日本で暮らしたことのある外国人が日本の愚痴を言うように
香港という異文化の中にいると、愚痴を言いたくなることが多々あります。
例えば香港人の遅刻、それをルーズだと批判するのはお門違い、
日本人が日本の基準に合わせて判断するから「遅刻」になるのです。
香港人では遅刻に関して寛容なので日本人の感じる「遅刻」は
香港人同士では問題になりません。
香港に住む日本人同士で、そういう香港の文化を
「香港あるある」として話すのはともかく、
香港人批判とも取れるので、香港人がいる場でこういう話題は慎む方がベターです。
それでも時々、日本語が流暢で日本に住んだことがある香港人の友人の前だと
ついつい相手が日本人のような感覚になってしまって口が滑ることがあります。
「どうして香港人はこんなにいい加減なの?」
「どうしてあの子は約束した時間に来ないの?」
「おかしいと思わない?」
そう言った私に、その日本語が分かる香港人の友人がこう言いました。
「ヒナタちゃん、ここは香港だよ」
あたりまえだけど、この簡単でありふれた一言に返す言葉は見つかりませんでした。
ここは香港、香港には香港のルールがあって、香港人が香港人のルールで生活している。
それが嫌なら、日本に帰ればいいし、勝手に香港に来て、香港の文句を言うのはおかしい。
私たちは郷に入っては郷に従え、なんて当たり前のことをよく口にしますが
香港在住日本人で香港に従順に従えている人はほとんどいません。
香港人が日本に来て、何で道にゴミ箱が無いの?!信じられない!
なんで百貨店が早く閉まるの?香港のSOGOだったら10時までやってるのに!
どうして入社後すぐに有給を申請したら白い目で見られるの?当然の権利でしょう!
なんて勝手に日本の事情に腹を立てていたら、
ここは日本だからそっちが合わせるべきだと思うはずですよね。
香港に住んで何かに出くわすたび「ここは香港だよ」といつも思い出します。
「とりあえず結婚しなよ」
今の主人と結婚する前のことです。
この人と結婚しようと決めたももの、引っかかっていることがありました。
主人は、子どもが欲しくないと言っていました。
結婚しても二人で仲良くやっていければ良いし、
子どもはうるさいから好きじゃないし、お金もかかるし、とにかくいらない、
主人は頑なにそういう考えでした。
私はと言うと、子どもがすごく好きなわけでもなく、出産も怖いと思っていました。
それに妊娠・出産・育児というと、仕事を辞めなければなりません。
職場や待遇に不満はなかったし、自分で稼げなくなるのは不本意だと思いました。
相手は経済的な余裕がないと言っているのに、私も仕事を辞めたら余計に苦しくなります。
でも同じくらい、30代に入って周りの友達も出産しているのを見て
今の年齢でしかできないのだ、産むなら少しでも早い方が良いと思いました。
子どもが欲しいからこの人との縁を手放して、また別の結婚相手を探すか。
もしかしたら、もう結婚まで考える相手に巡り合えないかもしれません。
この人と一緒になったら、子どもは諦めて二人で仲良く年を取るのか。
子どもが欲しいと言う願いは叶えられなさそうです。
最初から分かっていながら、子供が欲しくない人と結婚するのはナンセンスです。
そんなことを悩んでいたある日の仕事中、あまり話したことのない同僚の男性と一緒に
彼の取引先へ私も一緒に着いて行く機会がありました。
帰り道、二人でMTRに乗りながら仕事以外の話をぽつぽつし出して、
私もつい、今こういう情況で悩んでいると打ち明けました。
その同僚は香港人男性で、結婚5年目の奥さんがいて、子どもはいませんでした。
私が「結婚したいけど、相手は子どもが欲しくないと言っているから
結婚をやめておいた方がいいのか迷っている」と言うと彼はこう言いました。
「とりあえず結婚しなよ。まずは結婚、先のことは結婚してから考えたら良い」
そう言われて、背中をポンと押された気がしました。
この言葉で、私は結婚に踏み切ったと今も思っています。
結婚すら30歳を過ぎて長引かせてしまった私が、
この人は条件が揃わないからやっぱりやめておく、ではいつまでも前進できません。
結婚相手の条件が多少揃っていなくても、今は結婚が最優先。
彼ら夫婦のように例え子どもが欲しいと思っていても、
なかなか授からないこともあります。
仮に相手が子どもがほしい人だったとしても、子どもができるとは限りません。
できないことが原因で、その結婚がいつか終わってしまうかもしれません。
逆に、今は子どもが欲しくないと言っている相手だって、
心変わりをして欲しくなるかもしれないし、不意にできてしまうかもしれません。
とにかく、子どもについては誰も予測できないことだから
まずは、子どもがいてもいなくても、その人と結婚するかどうかだけを考えたらいい、
その後のことは、夫婦になってから決めたらいいと言われました。
先々のことを計画して、万全の準備を整えてから行動するのがリスク回避のはずです。
私の悩み方は日本人的な考えに近いと思います。
そして彼のアドバイスは非常に香港人的な考えだと思いました。
とりあえず目の前のことを決める、その後のことはその時その状況で考える。
先の読めない未来のことを勝手に解釈して諦めていたら何もできません。
結局、主人はその後、子どもを望むようになり、私たちは一児に恵まれました。
私の友人の赤ちゃんを抱く機会が続いたり、
親戚の子どもと遊んでみたら、うるさいどころか素直でいい子だったり、
主人が突然病気になって、病床で家族のありがたみを身に染みたりと、
いろいろな出来事があって、主人も新しい家族を迎えたいと思う様になりました。
まあ、多少は私が仕向けたところもありますが、
何にせよ、この結婚があってこその妊娠・出産だったと思っています。
以上、いかがでしたか。
皆さんが何かに悩んでいる時も、香港人の一言でポンと解決するかもしれませんね。